これだけは知っておきたい神社のこと・神社の情報・検索サイト 神社.com


特集 vol.153
古代ニッポンのロマンを探求
神話の神社を歩く~
ヤマタノオロチ編
今回は、スサノヲVSヤマタノオロチのお話。舞台を高天原から出雲国に移し、知略・バトル・ロマンスの三拍子そろったエピソードと、ゆかりの神社をご紹介します。

スサノヲ、美しい娘クシナダヒメに出会う


殺人事件ならぬ殺神事件までおこして、ついに高天原から追放されたスサノヲは、地上へと逃れて出雲国の斐伊川(ひいかわ)の上流へ降り立ちました。
そこで出会ったのが、嘆き悲しんでいる老夫婦アシナヅチ・テナヅチと、夫婦の8番目の娘クシナダヒメ。
毎年やってくるヤマタノオロチという大蛇に、娘を一人ずつ呑まれており、まもなく最後の一人となってしまったクシナダヒメも生け贄になってしまうため泣いているというのです。
スサノヲは、娘を嫁にもらうかわりにヤマタノオロチ退治を買って出ました。
高天原では荒ぶる神さまでしたが、美しい娘の前ではヒーローに大変身。ここからスサノヲの大活躍がはじまります。


出雲市を流れる斐伊川。曲がりくねった川筋を持つこの川がヤマタノオロチ、氾濫により流される田はクシナダヒメの隠喩になっているという説もあります。

ヤマタノオロチが枕にした草枕。安政年間に治水工事のため山がけずられ、現在はこんもりとした森が残っています。

草枕のそばに鎮まる八口神社にも、スサノヲ活躍の伝説が残されています。

スサノヲのとった
作戦とは・・・


さすがのスサノヲも大蛇にそのまま立ち向かうのは部が悪いと考えたのでしょうか?スサノヲがとった作戦は、アシナヅチ・テナヅチに、屋敷を八つの門のある柵で囲ませ、門ごとに樽に入れた強い酒を用意させること。大蛇を酒に酔わせて、弱らせたところを討ち取ろうというものでした。
やがて娘を狙ってやってきたヤマタノオロチは、真っ赤な目に八つの頭を持つ恐ろしい姿。しかし、それぞれの頭を酒樽に入れて飲み干すと、狙い通り酔って寝てしまいました。
すかさず腰の剣で頭を落としたスサノヲが、さらに念を入れて体を切り刻んだところ、尾のあたりから剣が見つかりました。これが三種の神器と伝わる草薙剣です。
この剣を自分のものにするべきでないと考えたスサノヲは、アマテラスに献上したとされています。
酔って寝てしまったヤマタノオロチが枕にしたと伝わるのが、斐伊川と赤川の合流点付近にある草枕。
この森をのぞむ位置にある八口神社(やぐちじんじゃ)は、スサノヲがここから矢を放ってヤマタノオロチを仕留め、その頭を切り分けた場所だとも伝えられています。



奥宮の夫婦岩。中腹まで足元が悪いので、運動靴が必要です。

八重垣神社の鏡の池。

鏡の池の占いは、縁結びを願う女性たちに大人気。

二柱が結ばれたふたつのお宮


見事にヤマタノオロチを倒したスサノヲは、クシナダヒメとの婚儀の場所を探し出雲の須賀という場所にたどりつきました。スサノヲは「この地に来てわたしの心はすがすがしい」といい、日本で初めての宮殿を建てることにしました。
そこで歌われたのが、日本史最古の和歌といわれるこちら。
 八雲立つ 出雲八重垣 つまごみに
 八重垣つくる その八重垣を
このお宮が、縁結びや子授けの御神徳が伝わる島根県雲南市大東町須賀の須我神社(すがじんじゃ)です。
主祭神は須佐之男命(すさのおのみこと)と奇稲田比売命(くしいなたひめのみこと)、そして御子神の清之湯山主三名狭漏彦八島野命(すがのゆやまぬしみなさろひこやしまのみこと)。日本初之宮、和歌発祥の地としても知られています。須我神社には、八雲山頂にある奥宮との二宮詣での慣わしがあるので、時間があればぜひセットで参拝を。奥宮に鎮まる夫婦岩には、親子3柱が祀られ神秘的な雰囲気が漂っています。
また、島根県松江市の八重垣神社(やえがきじんじゃ)は、社伝によるとヤマタノオロチ退治のときにクシナダヒメが避難したといわれる場所。さらに、須賀の里に加えてこの地にも宮殿を作ったとも伝えられています。
須我神社と同様に素盞嗚尊(すさのをのみこと)と稲田姫命(いなたひめのみこと、クシナダヒメと同神)が祀られ、二柱が結ばれたことから縁結びの神さまとして昔も今も女性たちが熱心に参拝しています。
恋する女性が見逃せないのが、クシナダヒメが鏡代わりに姿を映したとも伝わる鏡の池での占い。占い用紙に硬貨を乗せて浮かべるもので、良縁が早いか遅いかなどを占うことができます。



記紀随一のトリックスターの退場


さて、クシナダヒメと結ばれたスサノヲは宮殿で子をなし、かねてからの願いどおり母イザナミがいる根の国へ去っていったと短く記されています。
母に会いたくて子どもっぽく泣き叫んだかと思えば、高天原では凶暴な一面を見せ、地上に降り立ったあとは知略にすぐれた勇敢なヒーローに。最後は静かに退場していったスサノヲ。
記紀のなかで、もっとも複雑な性格を持つトリックスターが主人公となるお話しもここまで。次回は因幡の白兎伝説をご紹介します。



【次のお話、「因幡の白兎編」はこちら】