現存最古の歌集といわれる万葉集。たくさんの草花の歌が詠まれていますが、もっとも多く登場するのが萩の花です。その数は、2位の梅118首よりも多くダントツ1位の141首。
秋萩の 咲き散る野辺の 夕露に 濡れつつ来ませ 夜は更けぬとも
巻10-2252
萩が咲いては散る野辺の夕霧に濡れながらも来てください
夜が更けたとしても
しっとりと濡れた萩の咲く夜の野辺の景色が浮かび上がるようなこちらの一首は、待つしかない女性の切ない恋心を歌っています。
萩の歌がなぜこんなにも多く詠まれたのか、はっきりとはわかりませんが、どこか寂しさを感じる秋の景色に咲く繊細で可憐な花が、万葉人の詩情を誘ったのでしょう。
梨木神社(なしのきじんじゃ)は、京都きっての萩の名所。「萩の宮」とも呼ばれていますが、萩が咲く季節におこなわれる「萩まつり」は“風流”という言葉がぴったり。俳句・和歌が書かれた短冊が萩の枝に結ばれ、舞踊、邦楽、弓、居合など伝統的な奉納行事やお茶会も開催。
一つひとつ短冊を読んでいってもいいですし、奉納行事を見学しても、もちろんお茶会に参加するのも楽しそうです。ちなみに、お茶会で使われる水は、京都三名水のひとつに数えられる境内の「染井の井戸」の水。名水で優雅な一時を過ごして秋を満喫してみてはいかがでしょうか。