神社でいただいたお神札(ふだ)。きちんと神棚にお祀りしたくても、いまや神棚がある家は少数。そんななか、現代の家にも似合う神棚がでてきています。ネットショップでは、シンプルなデザインの神棚がたくさん販売され、無印良品の「壁につけられる家具」を使って神棚をDIYする人もいます。
モダンな神棚にいち早く注目し、2008年に「未来の神だな」デザインコンテストをおこなったのが埼玉県神社庁です。写真の神棚が「未来の神だな」デザインコンテスト大賞受賞作品「いのり501」(壁掛けタイプ)、優秀賞受賞作品の「いのり301」(据え置きタイプ)。
いったいなぜ、このような神棚が作られたのでしょうか?埼玉県神社庁主事の武田淳さんにお話をうかがいました。
「旧来の神棚が現代の住宅にはあわず、引っ越しを理由に神棚を返される方がたくさんいらっしゃいました。その度にさみしく歯がゆい思いをし、今の住宅事情に似合う神棚を作りたいと思っていたのです。あるとき、神棚のデザインコンテストのアイデアをいただいたことで『渡りに船』と提案に乗り、『未来の神だな』ができました」。
「未来の神だな」はとてもおしゃれで、流行の北欧風のインテリアにもよくマッチしそうです。実際に「いのりシリーズ」をお祀りされた方からは「シンプルな神棚なので部屋におっても違和感なく祀ることができました」というコメントも寄せられていました。
「未来の神だな」についてお話をうかがったところで、お神札の正しい祀り方が気になってきました。調べてみると方角や高さに決まりがあるようです。
お神札の向きを東向き、南向き、または東南向きにし、目線より高い位置に置くこと。また、人が集まる場所、明るく心地よい場所に祀るのがよいとされているようです。ただし、間取りや造りによりふさわしい場所を選ぶのがよいとのこと。東・南向きにするには低い位置にしかお祀りできない、そんな場合はどうすればよいのでしょうか?優先すべき決めごとがあるのでしょうか?
「実はお神札や神棚の祀り方に絶対的な決まりごとはありません」と武田さん。「方角や高さなど、住環境によってできることとできないことがあるものです。一番大事にすべきことは、神さまに失礼にならない位置にお祀りすることです。お神札を家に祀ることを、偉いお客様を家にお招きすると考えると、答えが出やすいかもしれません。家のなかのどの場所が偉い方にふさわしい場所なのかを考えてみてください。玄関やトイレ、キッチンは失礼にあたりそうなので、居室の日当たりがよく心地よい場所にする、というようなイメージですね」。
場所が決まったら、お神札を納めてみましょう。近世以降は、神宮大麻(じんぐうたいま)と呼ばれる伊勢神宮(いせじんぐう)のお神札と氏神さまのお神札、また特別に崇敬している神社のお神札を祀るのが一般的になっています。神宮大麻は、伊勢神宮から全国の神社に配られており「天照皇大神宮」と書かれています。
3枚横に並べる場合は中央に神宮大麻、向かって右側に氏神さま、左側に崇敬神社のお神札を祀ります。重ねて祀る場合は手前に神宮大麻、次に氏神さま、最後に崇敬神社のお神札を祀ります。
お供えものは、中央にお米、向かって右側に塩、左側に水を置くのが作法です。塩、水の前に酒をお供えすることもあります。
このお供えものが、個人的には最大のハードルだったりします。きちんと取り替えなければならないと思うと、ハードルが上がってしまいますし、忘れたらバチが当たるんではないかと心配になると、正直お神札をお祀りすること自体に尻込みしてしまうことも・・・。お供えものは、どれくらいの頻度で取り替えればよいのでしょうか?
「神さまの食事にあたるものなので、毎日がよいでしょう。ただし毎日取り替えるのが難しいようであれば、水だけは毎朝、毎月1日・15日にお米と塩を替えるというようにルールを決めていただいた方がよいかと思います。マニュアルにとらわれるよりも、毎日神棚に手を合わせ、神さまに感謝の気持ちを伝えることを大切にしていただきたいですね」。なるほど。確かにマニュアルにとらわれて、手を合わせることがなくなってしまえば本末転倒。武田さんのお話で、構えずにお神札をお祀りすることができそうです。