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特集 vol.184
海を見下ろす絶景の杜、久能山東照宮
神さまの山へ1日トリップ
「遺骸は久能山に埋葬すること」を遺命とした徳川家康公。家康公の御霊が眠り、美しい景色が広がる久能山東照宮の参拝レポートをお届けします。

一般運賃は往復1100円、片道600円。東照宮拝観・東照宮博物館入館とロープウェイのセット券も販売されています。

日本平から
ロープウェイで久能山へ


2011年から毎年1回、御神体とされている山、神社が鎮まる山をご紹介してきた「神さまの山へ1日トリップ」特集。
6回目を迎える今年は、静岡県静岡市の久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)を参拝してきました。

日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)をはじめ、「東照宮」と名のつく神社が徳川家康公をお祀りしていることは神社好きの方にはご存じの通り。久能山東照宮は、全国の東照宮の創祀となる神社です。
久能山は、駿河湾沿いに位置する標高216mの小さな山。
アクセスは、海沿いから続く1159段の表参道を登る方法と、日本平からロープウェイで久能山に渡る2種類のルートがあります。



こちらが山下の表参道の入り口。石鳥居は大正4年(1915年)におこなわれた東照宮三百年祭を記念して建てられました。

以前表参道の石段を登ったことがあるため、今回はロープウェイを利用するルートをチョイスしました。
ロープウェイの出発点である日本平は、日本武尊が東征のさいに山頂から四方を眺めたことからその名がついたといわれる景勝地。日本観光地100選にも選定されています。
ロープウェイに乗車すると、目の前には一面の海。
わずか5分の空中散歩ながら、美しい景色を楽しむことができました。


社殿には当時最高の技術が結集


ロープウェイ久能山駅に到着し、社務所の受付を通ると朱塗りの大きな楼門が出迎えてくれます。

家康公は死の直前に家臣を集め「遺体は久能山に葬り、増上寺で葬儀をおこない、三河国の大樹寺に位牌を納め、一周忌が過ぎて後、下野の日光山に小堂を建てて勧請せよ、関八州の鎮守になろう」と遺命を残しました。
元和2年(1616年)4月17日に家康公が75年の生涯を閉じられたのち、この遺命により御遺骸が久能山に埋葬。翌5月には、二代将軍秀忠公により久能山東照宮の造営が着工され、その後わずか1年7カ月という短期間で竣功しました。
おそらく秀忠公をはじめ家臣は、家康公にふさわしいものになるように生前から準備を進めていたのでしょう。
造営期間は短いものの、社殿には当時最高の建築技術・芸術が結集され、現代にも伝えられる神社建築となりました。


社務所の受付を抜けるとすぐに、色鮮やかな楼門が出迎えてくれます。


「キレイ!」と思わず感嘆の声をあげた御本殿。

御本殿からさらに100段の階段を上ると、静謐な空気が漂う神廟が。

海の大パノラマが
広がる表参道へ


実際に歩き目にする社殿群は、見る者を圧倒するような壮麗さ。
2016年11月に社殿・唐門漆塗修復工事が竣功したばかりとあって、極彩色の装飾がはっきりと見てとれます。
なかでも圧巻は国宝の御社殿。地の黒漆の上に金の細工がふんだんに使われ、眩いほど鮮やかです。
御社殿の建築様式は、本殿と拝殿を石の間でつないだ権現造。家康公を「東照大権現」としてお祀りするここ久能山で用いられたことから、全国に普及することになりました。

御社殿の裏に向かうように足を進めると、一転して色を廃したひっそりとした趣の空間が表れます。境内のもっとも奥深くにあり、家康公が埋葬された神廟です。
静かに手を合わせたあと、帰路に向かうと帰りは駿河湾をところどころから見渡すことができました。美しい景色がもっと見たくなり、表参道の石段の方まで足を伸ばしてみると、石段の脇はさえぎるもののない絶景。家康公が埋葬地に久能山を選んだ理由のひとつは、この素晴らしい景色が眺められるからに違いありません。海の大パノラマは、長い石段を登ってきた人々の力になっているようでした。


海を見渡す表参道の石段。山の下から1159段続いています。