神社での占いの代表格といえば「おみくじ」。
おみくじは、個人の運勢を占うものですが、その年の行く末を占う神事としての占い、年占(としうら)がおこなわれているのをご存じでしょうか?
天候や作物のでき高を対象にすることが多く、神さまによる天気予報、収穫予想として多くの人に頼りにされてきました。
代表格は、小正月などにおこなわれる「粥占神事」。
長野県下諏訪町の諏訪大社下社春宮(すわたいしゃしもしゃはるみや)でおこなわれる「筒粥神事」も、そのひとつです。
1月14日夜から始まる神事では、神釜に米・小豆とヨシの茎44本を入れて粥を炊き、翌朝ヨシの中に入っている粥の状態で43品目の作物のでき具合と世の中の吉凶を占います。
今年の世相は5分満点中3分6厘。
2015年は3分7厘、2016年は今年同様3分6厘なので、近年に比べて大きな変動はない年なのかもしれません。
佐賀県みやき町の千栗八幡宮(ちりくはちまんぐう)の「お粥試し」は、なんとカビの生え方で吉兆を占います。
2月26日にお粥を炊いて神器に盛り、十文字に箸を渡して筑前・筑後・肥前・肥後に国分けをします。半月以上そのまま置いてカビを生やし、3月15日の早朝に結果を公表。
大麦、小豆などの作物だけでなく、天候や台風、事故、火災、地震、生まれ年別の今年の運勢、気をつけるべき病気など、現代人にも興味深いさまざまな内容占われています。
結果の公表日は、「お粥祭り」を開催し誰でも自由に参列が可能なほか、みやき町観光協会の公式サイトみやきsanpoにも掲載される予定です。
古墳時代以前にもおこなわれ、最古の占い方のひとつとされるのが鹿の肩甲骨を使った「太占(ふとまに)」です。
この占いが現在もおこなわれているのは、東京都青梅市の武蔵御嶽神社(むさしみたけじんじゃ)の「太占祭」と 群馬県富岡市の貫前神社(ぬきさきじんじゃ)の「鹿占神事(しかうらしんじ)」。
武蔵御嶽神社の「太占祭」は、初詣でにぎわう1月3日に斎行。
占いのおこりは、御祭神が占いをつかさどる神さま櫛真智命(くしまちのみこと)であることに由来すると言われています。
秘事のため祭りは一般公開されていませんが、結果表は3日の午後から頒布されています。いまでも農家の人が作付けの参考にしているだけでなく、気象予報士の人が求めていくこともあるそう。
貫前神社の「鹿占神事」は、古くは冬と春の御戸開祭に関連しておこなわれていました。現在の開催は、冬の御戸開祭に関連し12月8日。
神事では、鹿の肩甲骨を焼いたキリでつらぬき、その通り方によって甘楽郡の旧31カ村の火難の吉凶を判断します。
この占いでめずらしいのは、対象が穀物や天候ではなく、火難だということ。
いまのように消防体制が整っていなかった時代、火事は地震にもおとらない災害のひとつだったはず。「鹿占神事」が、重用されたのは想像に難くありません。
ほかにも、神社ではさまざまなことに占いの要素を見いだしてきました。
たとえば、長野県にある諏訪湖で数年に一度見られる「御神渡り(おみわたり)」。
「御神渡り」とは、湖面の氷が大音響と共に山脈のように盛り上がり、湖岸から湖岸まで数キロにわたる氷の道ができることをいい、諏訪大社上社の男神が下社の女神のもとへと通う恋の道であるともいわれています。
この「御神渡り」のできる方向やできる時期は、江戸時代のころから収穫物の出来高を表すものとして年占いに用いられてきました。
ちなみに、今年は氷の張らなかった「明きの海」にあたり、不作とされています。
また、大阪市浪速区の難波八阪神社(なんばやさかじんじゃ)の綱引神事をはじめ、各地に伝えられている綱引きの多くは「勝った方にその年の福がある」「西が勝てば米が豊作」など占いの要素がこめられています。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」といいますが、脈々と受け継がれてきた年占は「当たる」といわれるものが多いもの。
今年がどんな年になるのか気になったら、年占で御神意を確かめてみてはいかがでしょうか。